超・格差社会アメリカの真実
み~ぽんさんのお勧め(?)で、本書を読み終えた。み~ぽんさんの書評はコチラ⇒http://miepong.blog81.fc2.com/blog-entry-27.html
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超・格差社会アメリカの真実 (284) 著者:小林 由美 |
著者の小林由美氏は、東大経済学部卒⇒長銀初の女性エコノミスト⇒スタンフォード大学MBA⇒ウォール街で日本人初の証券アナリストとして機関投資家向け調査会社入社⇒経営コンサルティング会社JSAに参加⇒現在に至る(日本でも2つの会社の取締役兼任)という輝かしい経歴の持ち主。長らくアメリカで暮らしてきた、かつ女性のプロフェッショナル、かつ経営コンサルとしての経歴・立場・技能を存分に活かしきった好著、である。
2006年9月に発刊され、今も売れ続け、むしろ売れ行きがジワジワ伸びてきているようだ。そんな本書の受け入れられ方も、本書を読んで頷けた。
アメリカ社会は4つの階層-「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」「落ちこぼれ」-から成り立つ超・階層社会であり、「特権階級」と「プロフェッショナル階級」をあわせた500万世帯、総世帯の上位5%未満の層に、全米の60%の富が集中している(第1章)。
それがなぜ、どんな歴史的経緯で起きたのか? それを解明した労作である。
まず、アメリカの税制(第2章)。国民99%の犠牲で、トップ1%だけに恩恵を与える税制になっている。1980年代以降急速に拡大した、富の格差の大きな理由のひとつが、政府の政策転換にあったとし、レーガン、クリントン、ブッシュ・ジュニア政権下の富の移動がどのようにもたらされたか、データを示しながら解明している(第3章)。
第4章 アメリカン・ドリームと金権体質の歴史、では、ナント1620年のメイフラワー号から今日までの200年間の歴史を概観しながら、今日の超・格差社会が生まれるに至った経緯を解明している。一言でまとめれば、アメリカでは「メイキング・マネー」こそが良いことで尊敬に値する行為であり、個人の価値を測る中心的な尺度であり、現在に至っているということ。この4章では、つくづくアメリカが移民で成り立ってきた国(社会)であることが分かる。
開拓時代に普及したエヴァンジェリカル(福音主義)の教えを背景に、本から得た知識や理屈を捏ね回して出てきた結論よりも、原始的で直感的な判断の方が正しいという感覚や信念が強く、高等教育への嫌悪が依然強く残っていると言う。教育は信仰を弱め、子どもを堕落させ、教育のない親に対する尊敬を失わせることを恐れ、学校に子どもを通わせることを親は拒否した。こういった背景があればこそ、(公)教育に対して社会の尊敬は低く、教師の待遇は劣悪で、学校の教科にはスポーツや音楽など、娯楽性の高いものが増えざるを得ない。子どもをもつプロフェッショナルは、安い住宅街に住んで月謝の高い私立学校へ子どもを通わせるか、高級住宅街に住んで質の高い公立学校へ通わせるかの二者択一となって、往々後者が選ばれ、学歴と所得水準が相関し、階層が教育を通じて固定化されている(第5章)。
高学歴の、つまり、特権階級の既得権益(?)を支持するシンクタンクには、特権階級からの金がさまざまな財団等を通じて流れ、シンクタンクのエリートたちがアメリカの政策目標をつくり、政治家たちが国民に「美しく」政策を説明することで、超・格差社会が国民に支持される構造が作られている(第6章)。
それでもアメリカ社会は「心地よい」のだ(第7章)。高くつく基礎教育を母国で終えた、スキルの高い人=移民を、自国に、オープンにフレンドリーに取り込むことで、アメリカは教育費を払わずに成果だけを手に入れている。クリエイティビティを尊重しすばやく事業化できる人材とノウハウが蓄積されていて、それがアメリカのバイタリティーを産んでいると言う。
そして最終章(第8章)では、アメリカ社会の本質と行方に関する著者の見解が述べられている。
日本社会の格差は「職業選択と労働報酬」の問題=損益計算書に現れる問題であり、アメリカの格差は「資産」の問題=貸借対照表に現れる問題である。この整理の仕方は、目から鱗、著者の真骨頂が発揮された見事な整理の仕方だと敬服した。
事業の競争力を維持するためには、高い労働報酬を維持するなら、相応しい価値の創造が必要で、そのためのスキルを提供するために、質の高い基礎教育、職業訓練、生涯教育、労働市場の流動性といった問題の解決が日本の格差問題を解消するカギである、という著者の指摘は、大変示唆に富んでいる。
10chanは、果たして、労働市場の流動性がわが国民に早々短時日で受け入れられるかについては大いに疑問を抱いている。そうであれば、質の高い教育と職業訓練ということになろう。が、この国の文教予算は、いまだそうなれておらず、企業内人材育成も、かなりズタズタになってしまっている。
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コメント
言及&TBありがとうございました!
>事業の競争力を維持するためには、高い労働報酬を維持するなら、相応しい価値の創造が必要で、そのためのスキルを提供するために、質の高い基礎教育、職業訓練、生涯教育、労働市場の流動性といった問題の解決が日本の格差問題を解消するカギである
10chanさんの説明を読んだら、読んだつもりで良くわかってなかった本書の流れというか構造と、価値が再確認できました。
道徳教育とかいってる前に、きちんと教育に予算を配分してほしいですよね。
投稿: みーぽん | 2007年7月 9日 (月) 16時33分
> 10chanさんの説明を読んだら、読んだつもりで
> 良くわかってなかった本書の流れというか構造と、価値が
> 再確認できました。
書籍の内容の理解や解釈、その活かし方(?)は、もちろん、読者によって様々ですから(^^;。
投稿: 10chan | 2007年7月11日 (水) 00時01分
週刊東洋経済2008年2月9日号P69右下において、JSA-International の小林由美取締役〔「男性なんてウイルスと一緒よ。遺伝子を誰かの細胞に忍び込ませて自分のコピーを作ってもらうしかないんだから」と、ユーモアたっぷりに皮肉る。〕などと書いている。これはどう考えても男性への侮辱であり内容としては「女性は産む機械」と同様の相手の尊厳を無視したものである。
投稿: ナイキンエース | 2008年4月20日 (日) 13時25分